自分に似合うスーツってどこのブランド?
プロから見たお勧めのスーツってどこ?
スーツやジャケットを着用している方は誰しもが思うことではないでしょうか。
雑誌やSNSで格好いい洋服が溢れる位の情報量で紹介されています。
また都会の百貨店に行けば、一堂に格好いいスーツがハンガーに掛かって沢山並んでいます。
そして誰しもが思ったことがあるはずです。
「多すぎてどれが良いのか分からない」
実際に「自分に合ったスーツ」を探す旅は簡単ではありません。
その理由は実は客側ではなく、販売店側にも事情があります。
理由は主に二つです。
1.フィッテイングにこだわると店舗の既製品が売れにくくなるから。
2.フィッテイングを含め本当に(似)合っていると教えてくれないから。
これらの理由に対する説明は後述させていただきますが...
あらかじめ誤解のないようにお伝えしておきます。
ブランドブティックが並べている既製品は、顧客にとって夢がある素晴らしい代物です。
一堂に並べてある無数の品物を眺めて、試着し、検討し、購入することが出来るからです。
在庫リスクを抱えてでも顧客に夢を与える空間が当たり前のように眼前に提供されています。
既製品販売は現代では常識になっていますが、本来であれば感謝すべき非常にありがたいサービスと言えます。
しかし、既製品はあくまで万人向けに作られた物です。個人に合わせるのは至難の業であるというのも事実です。
革靴ほどのフィッテイングの難しさはないですが、自身の着心地の良し悪しや、人から見られた時の第一印象を大きく左右しますので、購入時は慎重な判断が求められます。
さて、ここからはそんなスーツ・ジャケット購入の底なし沼にどっぷりと浸かった、著書自身の個人体験(失敗談と成功談)も踏まえてお話します。それが皆さまの今後のテーラードアイテムの購入にあたり、少しでも参考になればと思います。
これから全ての文章をご一読いただければ嬉しいですが、それなりの長文です。
はじめに構成を述べさせていただきます。
0.はじめに
1. 着用シーンを考える
6.まとめ
皆さまの元々持っておられる見識と興味の度合いもあるかと思います。
まずは結論ありきの方は、5から。
既製品はある程度買ってきていて、注文服に興味がある方は、4から。
読んでいただいても構いません。
出来ればどの方にもはじめから読んでいただきたいですが、特に既製品をこれから買い足していく方は、最初からお読みください。
はじめに
まずは私の簡単な自己紹介をさせてください。
東京・大手町にあるShoe Shine WORKSという靴磨き修繕専門店を営んでおります。
店主の菊池と申します。会社は設立から10年以上が経ちます。靴は何万足と手に取って見てきましたが、服に対する興味は靴に負けず劣らず、もしくはそれ以上(?)で惜しみなく出費(散財)してきました。
私個人の洋服遍歴は学生の時から始まりました。
三度の飯より服という位、服が好きでアルバイトで稼いだお金も服につぎ込みました。
それから30年以上経った現在。今までの洋服の購入額は1,500万円以上。
(本当に何をやっているんだと我ながら反省しますが...)もちろん処分した服も多く、購入点数はもはや数えられません。。
しかし、そんな散財歴を持つからこそ、皆さまにお伝えできるお話が沢山あります。
以下、アドバイスという形式で項目ごとに説明していきます。
アドバイスその1 - 着用シーンを考える
一口にスーツやジャケットと言っても色々な種類があります。
仕事着であっても、スーツなのかジャケパンなのか。
色は濃紺か濃いチャコールグレーでないとダメなのか。
立場や役職によって、相手にどう見られたいかも嗜好が変わってくるかと思います。
これらを一度整理するだけで、スーツやジャケットの選択購入はグッと楽になります。
アドバイスその2 - サイズが合った物を選ぶ
それは当然でしょうと思われる方も沢山いるかと思います。
しかしスーツやジャケットの洋装品は窮屈過ぎても、余裕があり過ぎてもいけません。
簡単なようで、意外とその間のフィッテングを探し当てるのは難しいんです。
タイトめが好みの方は、実際の適正サイズよりも小さめの物を選ぶ傾向があります。
ゆったりめが好みの方は、実際の適正サイズよりも大きめの物を選ぶ傾向があります。
サイズ感の好みまで指摘されるのは余計なお世話だと思われる方もいるかもしれません。
しかし、ご自身で鏡の前に立ってみてください。
真正面は見えていても、自分の背中は見えているでしょうか。
背中は自分では見えません。第三者、周りにしか見えません。
自分が良かれと思っている姿は、一面的な評価でしかありません。
後ろ姿や歩く姿勢、立ち振る舞いは周りにしか見えません。
自分では見えない所が多い分、客観的に(周りからどう思われているのか)スーツのサイズ適正を謙虚な姿勢で知りうることが必要なのです。
アドバイスその3 - 信頼できる販売員を見つける
これは非常に大切なことです。
自分が試着したアイテムに対して、良し悪しを正直に教えてくれる販売員が理想です。
これを難なくこなす販売員はかなり高度な接客レベルを持っています。
普通の販売員は顧客が試着した商品に対し、すべて「素敵です」「お似合いです」と答えます。そうすれば顧客に気分よく買い物をしてもらえると思っているからです。
理想の販売員は似合わない物を「似合わない」とストレートには言いません。
「こちらの商品も着てみてもらえますか」と代替品を持ってきて「こちらの方がよりお客様にはお似合いになりますよ。」と顧客の気分を害さずに、むしろ想像を超える提案をすることで顧客に感動的な体験をさせます。その商品が気に入れば、顧客の関心はそちらに映ります。
理想の販売員はその時初めて「先程ご試着していただいた物は…」と正直な意見を述べるのです。
普通の販売員にはここまでのことは出来ません。出来るようになるためには、経験と知識、それにより培われた絶対的な自信がないと、そこまでの踏み込んだ提案が顧客に出来ないのです。
では、そんな販売員さんをどう見つけるかと言えば...
それは運次第です。
しかしそんなアドバイスでは読者からお咎めを受けそうなので、強いて言えば、声を掛ける販売員さんをよく見て選ぶということです。
ここはもう直観でしかないですが「この人はしっかりしていてお洒落だし信頼できそう」と思える人に声を掛けてみましょう。
ちなみにそんな販売員はどれだけいるのかというと、実際にはなかなか存在しません。
大手企業や人気ブランドになるほど探すのは難しいかもしれません。
来店客数が多い店だと接客対応の時間の確保に余裕がないのと、社員やパート、アルバイトなど様々なスタッフが混在している可能性があり、言い方は悪いですが「当たりハズレ」のくじ運任せの要素も強くなっていきます。
その点で見ると、地域に根差した中小店舗や個人事業規模の専門店はかなり安心できると言っても良いでしょう。(ただし接客スタイルにかなり個性が出る場合があるため、相性の良し悪しはあります。)
アドバイスその4 - 既製品と注文品の違いを理解する
既製品と注文品。互いの性質は明確に違います。
しかし上手く使い分ければ、十分に共存は可能です。(どちらも上手に買い物できます。)
既製品を購入する場合の注意点をお伝えします。
1.ジャケット
「ジャケットは肩で着る」という位、肩回りのフィッテングが重要です。
この点を見誤ると、見た目がみすぼらしくなるばかりか、着心地も悪くなります。
(この部分を専門的に語り過ぎると長くなるためこの場では割愛します。)
2.パンツ・スラックス
ジャケットの存在に隠れがちですが、パンツのフィッテイングも非常に重要です。
特にウエスト周りを気にする方が多いですが、ヒップ~太もも辺りのフィッテイングが正しいかよく注意するようにしましょう。
パンツは立ったり座ったりと可動域が多く、生地の摩耗もジャケットに比べて早いため、より快適かつ適正なフィッテイングが重要です。
既製品体型と言われるような、スレンダーな体格に恵まれた方も少なからずいらっしゃいます。そのような方は、信頼のおける販売員の元で様々な既製品を購入できるでしょう。
しかし、マネキンと全く同じ体型の人は存在しません。体型のクセや姿勢、左右の歪みなど、皆さま体の特徴は千差万別です。
そうしたパーソナルな特徴と向き合いながらスーツを検討購入するとなると、それはやはりオーダーという選択肢が必然となります。
オーダーの種類は大きく分けて3つです。
①パターンオーダー
②イージーオーダー
③ビスポーク
「体に合ったスーツ」を条件に含めるならば①パターンオーダーは選択肢から外してください。デザインを色々選べますが、フィッティングは既製品とほとんど一緒です。
究極を求めるならば、やはり③ビスポークでしょう。
自分の体を採寸し体型の特徴も把握してくれます。自分の型紙も作ってくれます。まさに究極のパーソナルサービスと言えるでしょう。
しかし格好良いスーツになるかと言えば、実は必ずそうなるとは限りません。
自分の体に合ったスーツが必ずしも格好いい代物に仕上がるわけではないのです。
身体的特徴を知った上でどうデザインやシルエットを修正し、格好よく見えるように努力をしてくれるか。それはその時に対応してくれるテーラーにかかっています。
格好いい形になるように努力してくれればこの上ない幸運と言えます。
ただし相性もあります。テーラーにはそれぞれハウススタイルというものも存在します。
結局は人の手で作りますし感情だってあります。最後は人間関係だと言っても過言ではありません。
とりわけ海外でビスポークをする場合は、英語や現地語によるコミュニケーションスキルも求められます。そして高額消費をするからと言って、必ずしも最高なサービスを受けられる訳ではありません。
特にヨーロッパの有名な注文服店は顧客を五万と抱えている訳で、超富裕層の顧客も沢山います。そんな中で初めての注文を1回試しにやってみるという位では、「自分のためにどこまで対応してくれるのか」という過度な期待は持たない方が良いでしょう。
私自身も海外でビスポークの経験もありますが、納期は数年遅れる、連絡しても返信がこない、特に悪びれる様子もない、なんてことは珍しいことではありません。
そうしたサービス対応に心配がある場合は、一個人として海外で注文するのではなく、来日トランクショーなど日本の会社が仲介して行なってくれる機会を選びましょう。
何かあってもそこを通して連絡をすれば良いわけで、語学の心配もする必要がなく安心感があります。
または、日本のビスポークテーラーに仕立ててもらうのも良いでしょう。
日本語ですし、何より丁寧な対応してくれます。技術力も相当高いです。
欧米人でも日本の職人さんにオーダーする方が多数いるくらいです。
しかし、最大のネックはやはり費用でしょうか。
手仕事の手間暇や膨大な作業時間を考えれば当然なのですが、加えて昨今の物価高です。
日本国内でも40~50万円は当たり前ですし、欧州では100万円以上するなんてこともザラです。円安時はさらに費用がかかります。。
アドバイスその5 - コスパの高い注文服屋を探す
オーダースーツに費用をいくらかけるのか。
それは皆さまの考え方それぞれです。
お金を持っていれば、全員がビスポークをするのかというとそうでもありません。
所得の高低を問わず、ビスポークスーツは趣味性が強いため、よほど興味や熱意がある方でないと、そもそも作ろうとは思わないでしょう。
では、ビスポークほどの費用をかけずにオーダースーツが作れないか?というと...
答えは「作れます」。
ブルビスポークではなく、②イージーオーダーという方法を採用する注文服屋を探すことです。
これは①パターンオーダーと③ビスポークの中間かつ良いトコ取り、さらには抜群のコストパフォーマンスを誇る方法と言えるでしょう。
良いトコ取りはどういうことかと申しますと、既製品の格好いい形をベースに自身の体型に合うように補正してくれるため、着心地の良さと格好良さを同時に実現できる可能性が高くなります。
加えて、費用面です。
そもそもスーツにビスポークで50万円かけるのはどうなのかと考えている殿方にも、この方法は強くお勧めします。費用も10万円以下~20万円前後で収めることも可能です。
まとめ
ではコスパの高い注文服店はどこにあるのか言えば...
実は答えられないくらい沢山あります。
最近、街中でよくオーダースーツ店を見かけませんか?
店を選ぶ基準は、看板より「人」です。
素晴らしい対応をしてくれる販売員を見つけてください。それだけで仕上がりが驚くほど変わります。
あとは値段です。
この点は声を大にしてお伝えします。
大手テーラーほど規模の利益で、オーダースーツをお手頃価格で打ち出しています。
まるで既製品を買うのと変わらない位、もしくは既製品より安いのではないかと思う位にです。
安さには必ず理由があります。この物価高の昨今、安くて良い物は滅多に存在しません。
良い物は当然に高いのです。
オーダースーツは、生地と縫製で仕上がりの雰囲気がまるで変わってきます。
良い生地でオーダーをお考えの方は縫製にもある程度こだわることをお勧めします。
値段としては10万円前後~が目安になります。
逆にオーダースーツを制服着用のような形で割り切っていらっしゃる方は、ポリエステル混のお手頃生地で、東アジアの人件費を抑えた安い縫製工賃で仕立てるのも良いでしょう。
この場合は、なんと3万円位~でもオーダースーツが仕上がってしまいます。
この点は大手テーラーの規模の利益に軍配が上がります。予算感をそれ位に抑えたい方は、大いに活用されると良いでしょう。
しかし一番もったいないのが、良い生地を使って安いオーダースーツを作ろうとすることです。
先ほど申し上げたように、その場合は縫製工賃を安く抑えますので、全体の仕上がりが単調で仕立てに立体感が出ません。
生地が良いのに仕立てが悪いと元も子もありません。宝の持ち腐れとなります。
このように語れば色々とキリはありませんが、このような話でよろしければ、話の続きは私が在籍しております東京・大手町の靴磨き修理専門店Shoe Shine WORKSにお越しいただければ嬉しいです。
手短に話せるテーマでもないので、よろしければ靴の1足でもお持ちいただければ、靴磨きをしながらゆっくりお話をさせてください。
そして実は何を隠そう。
弊社でも最強のコスパ洋装品(イージーオーダー)であるScarpino【スカルピーノ】を展開しております。当店でないと手に入らないスペシャルな生地もストックしております。
しかし本業(靴磨き修理)ではなく、店主の好きが高じた趣味の延長線上の展開です。
あくまで常連様向けの付属的なサービスの一環で展示しております。
押し売りも全くしておりませんのでご安心くださいませ。
以上、少しでも皆様の今後のファッションライフが彩りのあるものになれば幸いです。
長文となりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
Shoe Shine WORKS
店主 菊池
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